法テラスの専門相談って信用できる?
法テラスは,原則として,契約弁護士を名簿順に割り当てているだけですから,個々の弁護士を紹介しているわけではないし,その弁護士の取扱分野や専門性などについてまったく関知していません。それが基本です(「法テラスは良い弁護士を紹介してくれるの?」を参照ください)。
ですが,法テラスが個々の弁護士の紹介に多少なりと関わる例外的場面は,いくつかあります。
代表的なのは,犯罪被害者精通弁護士紹介制度と,各地の法テラスで「専門相談」を実施している場合でしょうか。
法テラスでは,犯罪被害者の支援を業務のひとつとしており,特別に登録された犯罪被害者精通弁護士の名簿を用意して,犯罪被害者からの相談の場合に限って特定の弁護士個人を紹介する制度を設けています。
この名簿は,一定の知識や経験を要件にしているので,犯罪被害者問題にまったく理解のない弁護士が登録されることはありません。
精通弁護士名簿の中から,さらに女性弁護士の紹介をお願いしたり,事務所所在地の地域指定をしたりすることもできます。
当然のことながら精通弁護士の中でも経験や実力には結構な違いがあり,相性の問題などもあるのですが,もちろん,法テラスがそこまで踏み込むことはありません。あらかじめ用意された精通弁護士名簿の範囲内で,名簿順に紹介してくれるだけです。
それでも,犯罪被害者という極めて弱い立場で苦労されている方々にとっては,この制度に登録されている弁護士かどうかは,とても重要な基準になるでしょう。(もっとも,精通弁護士であることがその弁護士のホームページなどでわかるのであれば,わざわざ法テラスを通じて頼む必要はないのですが。)
また,地域によっては,法テラスでDVだとか交通事故だとか労働事件だとかいった一定の分野についての無料専門相談を実施している場合があります。
こうした専門相談の場合,地域の弁護士会(の委員会)と提携して,一定の要件で絞った特別な名簿を使っていることが多いようです。
ただし,その「一定の要件」がとっても緩くて無意味な可能性は十分にありますから(登録1年目の弁護士を外すだけとか),注意してください。
せっかくですからまた本当のことを書いておきますが,法テラスで行っている交通事故,労働事件,相続,離婚などの専門相談は,もともと取り扱う弁護士の数が多く,たくさんの弁護士が名簿登録する分野であるため,「専門」という言葉はあまり信用できません。一般の相談と同様に,当たり外れがあるでしょう。
これに対して,(同じ離婚でも)DV事件(のみ)とか,外国人事件,民暴事件あたりの専門相談が行われているなら,やる気のない弁護士はそもそも登録しない分野(弁護士が敬遠したい分野)ですから,「専門」という言葉も,ある程度までは信用できることが多いのではないでしょうか。
こうした多少の例外はあっても,基本的に法テラスは,名簿のアイウエオ順で無作為に弁護士を割り当てることしかしていません。
いろいろと条件を付けたところで,その条件の範囲内で,名簿の中でアイウエオ順に割り当てるだけです。あなたにはこの弁護士がいいですよ,という意味の紹介はしません。
結局のところ,法テラスの相談であれ何であれ,出会った弁護士が本当に良い弁護士かどうかは,自分自身が判断するしかないのです。(それについては,「弁護士の選び方(本当に良い弁護士とは?)」を参照ください。)