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終活関連のよい弁護士の選び方は?

【ご質問】

上野千鶴子氏の書かれたものを読み、小生も任意後見や死後事務を託す実務者を探しております。このブログを拝見し、やはり弁護士の先生に委任すべきかと思いました。

その一方で、委任されながら面会にも来ないなど義務を果たなかったり、或いは立場を悪用して横領する等の問題弁護士も散見されるようで、二の足を踏んでおります。

問題弁護士を避ける方法と、終活関連のよい弁護士先生の選び方についてそれぞれアドバイスをいただきたく、お願い申し上げます。

 

質問者:高齢者 さん

(月曜日, 09 9月 2019 09:53)

 

 

 

【回答】

問題弁護士を避け、本当に良い弁護士を選ぶための方法は、このサイトにいろいろ書いたとおりです。

……なのですが、特に「終活関連の弁護士探し」ということで、どんな注意をしたらいいか考えてみますね。

 

 

事件ごとの特色の違いに着目して、弁護士の選び方の違いについて考えることができます。

では、任意後見や死後事務などの終活事件は、ほかの事件と比べて、どんなところが違うでしょうか?

 

 

死後事務というのは、自分が死んでしまった後の葬儀その他の取り回しを弁護士に依頼することですね。

任意後見というのは、将来、認知症などで自分の判断能力が低下してしまった場合に、成年後見人等として身上監護や財産管理をしてもらえるように、あらかじめ契約しておくことです。

 

その結果、普通の事件とは、次の2つの点で大きく違います。

 

(1)死後事務にしても任意後見にしても、終活事件は高齢者の方ほど関心が高く、弁護士への依頼を考えることになります。

けれども、自分がいつ死ぬのかは分かりませんし、いつ判断能力が低下するかも分かりません。自分で思っていたよりも、ずっと長生きするかもしれません。判断能力が低下してからの人生が何十年と続くこともあります。

そのため、依頼した弁護士が実際に活動を開始する時期や、活動する期間の長さが、依頼する時点では分からない、ということになります。

 

(2)いわゆる終活事件では、依頼を受けた弁護士が実際に事務をするのは、自分が死んでしまった後であったり、判断能力が低下してしまった後になります。

つまり、自分が依頼した弁護士の活動を、自分自身ではもうチェックできない、ということになります。

 

 

では、それぞれの違いから、終活事件の弁護士選びで注意すべきなのは、どういった点でしょうか?

 

まず、(1)依頼した弁護士の活動開始時期や活動期間が分からないということは、事件の依頼から終了まで、予想できない長期間にわたる可能性がある、ということです。

つまり、活動開始前や活動中に、ひょっとすると依頼した弁護士が死んでしまったり、判断能力が低下してしまったり、場合によっては弁護士をやめてしまったりする可能性が、普通の事件よりも高い、ということです。

 

したがって、端的に言って、終活事件の依頼で高齢の弁護士を選ぶことは、なるべく避けるべきです。その弁護士自身が事件処理してくれる可能性は、かなり低いのですから。

 

もちろん、複数弁護士による受任であるとか、弁護士法人全体での受任であるとか、弁護士の個性を問わない依頼の仕方で良ければ、契約の際の担当弁護士の年齢を気にする必要はありません。

その場合は、個々の弁護士の人柄というより、その法律事務所全体を信頼する、ということになるでしょう。

 

そうでなくとも、終活事件の処理について十分な理解のある弁護士であれば、その弁護士自身に何かあった場合の対処方法(他の弁護士への事件処理の引き継ぎ方法等)について、事前の説明や契約書への記載をきちんと行うはずです。

相談の際には、その点を確認すると良いでしょう。

 

 

次に、(2)その弁護士の業務内容を自分でチェックできないような依頼をする以上、その依頼をする前に、あらかじめ弁護士との信頼関係ができていることが望ましい、ということになります。

 

以前に別の事件を依頼した際に、信頼できる仕事ぶりを確認できていれば、安心できるでしょう。

終活事件以外で、先に簡単な書面作成などの依頼をしてみることも考えられます。

 

私のおすすめは、個人としての顧問契約を締結してみることです。その弁護士の仕事の仕方や顧客との接し方について知るには、最適です。

 

実は、大多数の弁護士は、法人や事業者との顧問契約しか取り扱っておらず、個人顧問の経験はありません。(今は、そもそも顧問契約がない弁護士の方が数が多いでしょう。)

しかし、その弁護士が個人の終活事件を取り扱うつもりであれば、個人との顧問契約も同じく取り扱うべきであると考えます。

このことは、かなり奥深い問題でもあるのですが……。

 

ともかく、飛び込みでいきなり終活事件の依頼をするのは、あまりおすすめできません。

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コメント: 1
  • #1

    高齢者 (木曜日, 24 10月 2019 22:07)

    お忙しい中、親身にご助言いただき感謝申し上げます。
    特に「顧問契約」は、全く考慮外のことでした。確かに、信頼に足る方かどうかを知るのに、これはよい方法だと思いました。このことを含めて複数の先生方と相談し、即断でなく時間をかけて判断したいと思います。
    有り難うございました。