【ご質問】
相手方代理人のキャリアに見合う弁護士を探すというのも、ひとつの手段ではありませんか?
相手方代理人が、30年のキャリアを積んだ弁護士なのに、当方の弁護士が5年の若手弁護士であれば、それだけで交渉に負けそうな気がします。
裁判官もキャリア弁護士の意見の方に傾くことはないのでしょうか?
質問者:rikon さん
(日曜日, 29 4月 2018 17:05)
【回答】
キャリアという言葉にどこまでの意味を含めるかにもよりますが、経験年数という趣旨であれば、基本的にキャリアと交渉力は関係ありません。
キャリアが長くても交渉力が低いこともあるし、キャリアが短くても交渉力が高いことはあります。その逆も同じです。
要は、その弁護士の能力や努力(学習)、経験の内容などによります。
弁護士としての実務上、相手の弁護士の「キャリア」によって交渉の難易が変わっているとは思えません。
ただ、自分の依頼者に厳しい意見を言えない弁護士は、話し合いをまとめる力がないので、結果としてダメです。損しているのは、その依頼者のほうなのですが。
どちらかというと若い弁護士にこのタイプが多いのは、確かです。
また、裁判官が弁護士のキャリアで意見を変えることは、ほぼあり得ないことだと言えます。ここは、よく誤解されるところです。
裁判官と弁護士の間には、一般社会のような上下関係や人間関係がそもそもまったく成立していないので、相手のキャリアなんかには無関心であり、ちっとも影響されないのです。若手だろうが弁護士会の(元)会長であろうが、裁判官にとっては無関係です。
キャリア5年と30年との違い、というようなレベルであれば、ほぼここまでの考え方でいいでしょう。
(以下は、おまけです。)
まだ経験が浅すぎて「キャリア」というレベルに至っていない新人弁護士の場合などには、注意が必要なこともあります。
特に、新人が先輩弁護士の助言を受けずに仕事をしていると、どうしても実務の細かいところが分かりません。
新人一人だけの事務所(ソクドク事務所)や、若手ばかりが集まって作っている事務所だと、経験のある先輩にきちんと相談できないまま弁護士経験を積んでいくため、年数と経験力が正比例しないこともあります。
経験1年以下の純粋な新人弁護士の場合や、ベテラン弁護士の直接指導(いわゆるOJT)を受けたことがない経験2~5年以下の弁護士だけの事務所の場合は、経験不足ということも、あり得ます。
また、ベテランといっても経験何十年というレベルになると、その弁護士が若いころの実力を今も維持、向上させているのかどうかは、かなりの程度、人によります。
ベテランのすごい人は本当にすごいですが、ベテランなだけで新しい法律をほとんど何も勉強していないダメダメな人も、実際、多いです。
そういう「超~」のつく若手やベテランたちに対して、裁判官が思わずあきれ顔をするということなら、十分あり得ます。
(同じく、「超~」のつく裁判官に弁護士があきれることも、十分あり得ます。)
これらは、結局のところキャリアの問題ではなく、「その人」の問題なのです。中堅でもダメな人はダメですから。
なお、以下は本当に本当の参考程度にしてほしいのですが……。
ロースクール(法科大学院)ができて新司法試験制度となってからは、出身大学のいわゆる偏差値ランクにかかわらず、たくさんの司法試験合格者・弁護士が誕生しています。
旧司法試験では、東大や早慶などをはじめとする偏差値上位ランクの大学の出身者ばかりがひしめいていました。
出身大学のランク差など、旧司法試験に合格してしまえば、能力の差を示す要素にはなりませんでした。
しかし、今はもう時代が違います。弁護士としてのキャリア以前に、もともとの個人的能力に一定範囲の分布(個人差)があっても、おかしくはありません。
もし、少しでも能力の高い弁護士を探したいという強い希望がある場合には、ロースクール出身の弁護士については、「出身大学」を確認するという手段も、一応考えられます。
これに対して、「出身法科大学院(ロースクール)」の比較は、ほとんど意味がありませんので、注意してください。
また、旧司法試験合格者の弁護士については、出身大学の比較は必要ないし、無意味でしょう。
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『アディーレ法律事務所の事務職員による非弁行為の告発』 (日曜日, 29 3月 2020)
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